まいのすがた
舞容

楽そのものを楽しむ「管絃」に対して楽を伴奏として舞を舞うものを舞楽[ぶがく]といいます。
豪華絢爛な衣装をまとい、「舞楽吹[ぶがくぶき](舞立[まいだち]とも)と言われ管絃よりも強勢闊達に奏される楽を伴い舞われる舞は
その舞手や出で立ちによって次の5つに分類されます。


ひら まい
平舞

「楽家録」には「干戈無キ者ヲ文ト曰ウ」とあり、太刀や鉾を用いず緩やかに舞われる舞容を言います。
文舞[ぶんのまい]とも呼ばれ4人または6人で舞われ、衣装は主に[かさね]装束や蛮絵[ばんえ]装束が用いられます。

現行では
春鶯囀[しゅんのうでん]≫≪蘇合香[そこうこう]≫≪萬秋楽[まんじゅうらく]
新鳥蘇[しんとりそ]≫≪古鳥蘇[ことりそ]≫≪退走禿[たいそうとく]≫≪進走禿[しんそうとく]≫の大曲や大方の楽が平舞です。

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ぶ のまい
武舞

「楽家録」には「干戈有ル者ヲ武ト曰ウ」とあり、太刀や鉾を用いて勇壮に舞われる舞容を言います。
4人で舞われます。

現行では
陪臚[ばいろ]≫≪太平楽[たいへいらく]≫の2曲が武舞ですが、
古くはさらに≪皇帝破陣楽[おうだいはじんらく]≫≪散手破陣楽[さんじゅはじんらく]≫≪秦王破陣楽[じんのうはじんらく]≫を加えた五破陣楽が武舞とされていました。

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はしりまい
走舞

面を着け桴や鉾を持ち、手に剣印や拳を用いて歩趨疾速[ほすうしっそく]のごとく舞われる舞容を言います。
走物[はしりもの]とも呼ばれ1人または2人で舞われ、衣装は主に裲襠[りょうとう]装束が用いられます。

現行では
陵王[りょうおう]≫≪胡飮酒[こんじゅ]≫≪蘇莫者[そまくしゃ]≫≪還城楽[げんじょうらく]≫≪拔頭[ばとう]≫≪散手[さんじゅ]
貴コ[きとく]≫≪納曾利[なそり]≫の8曲が走舞です。

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どう ぶ
童舞

子供によって舞われる舞容を言います。4人または1人で舞われます。

現行では
迦陵頻[かりょうびん]≫≪陵王[りょうおう]≫≪還城楽[げんじょうらく]≫≪拔頭[ばとう]≫≪散手[さんじゅ]≫≪胡蝶[こちょう]≫≪納曾利[なそり]≫の7曲が童舞ですが、
安摩[あま]≫≪五常楽[ごしょうらく]≫≪打球楽[たぎゅうらく]≫≪貴コ[きとく]≫≪埴破[はんなり]≫≪蘇利古[そりこ]≫≪登天楽[とうてんらく]≫なども童舞として舞われていたようです。

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おんなまい
女舞

女性によって舞われる舞容を言いますが、現在では復興再演される以外では行われていません。
6人・8人・10人・12人など多数で舞われたようです。

春鶯囀[しゅんのうでん]≫≪萬歳楽[まんざいらく]≫≪喜春楽[きしゅんらく]≫≪桃李花[とうりか]≫≪綾切[あやぎり]≫が女舞として舞われていたようです。

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とう  ぶ  つがいまい
答舞番舞

舞楽において左方・右方で各1曲ずつ舞うのが定制となっていて、その際組み合わされる舞を言います。
特に左方よりみて右方の舞を答舞と言い、右方よりみて左方の舞を番舞と言います。
古来より組み合わせが決められていて、走舞は走舞どうし、大曲は大曲どうしというように同系の舞が組み合わされます。
中には左方どうしの組み合わせや1曲のみ舞われるものもあります。

左方右方:春鶯囀[しゅんのうでん]新鳥蘇[しんとりそ] など
左方どうし:安摩[あま]ニ舞[にのまい] など
1曲のみ:振鉾[えんぶ]≫≪一曲[いっきょく] など

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えい さえずり

古くは舞者が舞の途中で短い句を自ら唱えながら舞ったもので、その詞は現在も伝えられていますが唱法が伝わっていないため行われていません。一部の楽にその名称のみ残されています。

名称が残るもの
詠 ─ ニ舞[にのまい]≫≪五常楽[ごしょうらく]
囀 ─ 陵王[りょうおう]≫≪安摩[あま]≫≪ニ舞[にのまい]

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