真宗佛光寺派の声明
浄土三部経(『佛説無量寿経』・『佛説観無量寿経』・『佛説阿弥陀経』)を所依の経典として、正信偈・念佛和讃・回向などをお勤めします。
親鸞聖人が天台宗で修行されていたこともあり、天台系声明も用いますが
佛光寺派独自の節は御家流と呼ばれ独特の美しさと哀愁が有り、比較的難しいとされています。
佛光寺派で勤行に用いられるものとして大きく次の三つに分けられます。
経文・偈文
- 佛説無量寿経 (大経)
上下巻。康僧鎧 訳。法蔵菩薩が四十八の大願を立て阿弥陀仏となり、衆生を救うことを説いたもの。
- 讃佛偈
大経上巻にある四言八十句の偈頌。阿弥陀仏が法蔵菩薩であった時、師の世自在王仏を讃えて歌ったもの。日常勤行やその他軽度の勤行に用いられる。
- 三誓偈
大経上巻にある五言四十四句の偈頌。法蔵菩薩が四十八願を立てた後、さらに重ねて願意を説いたもの。日常勤行やその他軽度の勤行に用いられる。
- 東方偈
大経下巻にある五言百二十句の偈頌。東方をはじめとする十方世界の諸仏の国の菩薩たちにも、無量寿仏を仰ぎ見るように勧めたもの。葬儀式に用いられる。
- 佛説観無量寿経 (観経)
きょう良耶舎 訳。釋尊が韋提希夫人に、阿弥陀仏の極楽浄土に往生するための観法を説いたもの。
- 佛説阿弥陀経 (小経)
鳩摩羅什 訳。阿弥陀仏の極楽浄土の美しさを述べ、往生を勧めるもの。
- 帰三宝偈
善導大師の『観無量寿経疏』玄義分の巻頭にある五言五十六句の偈頌。
仏・法・僧の三宝に帰敬して仏力の加護を請い、菩提心をおこして生死を超えようと勧めるもの。葬儀式にのみ用いられる。
御家流
- 正信偈 (正信念佛偈)
親鸞聖人の『教行信証』の行巻末にある七言百二十句の偈頌。阿弥陀仏・釋尊・七高僧を讃え教えを述べたもの。
- 真譜
本山で御正忌報恩講の24日中逮夜以後の各逮夜勤行に用いられる。現在ではあまり用いられない。文類正信偈の節と同じ。
- 行譜
佛光寺派において最も中心となるもの。日常勤行をはじめ重要法要においても用いられる。
- 草譜
行譜を速く唱えるもので節は行譜と同じ。本山で毎月7日・8日の中興上人の月次法要にのみ用いられる。中興上人逝去の知らせを受けた時、本山では勤行中で急いで唱え勤行を終わらせたため、行譜を速く唱えるものを草譜と呼ぶと伝えられる。
- 舌々
節を付けず棒読みにするもので、他派で舌々とは七言の偈文を四言に省略するものを言うが、佛光寺派では略することはない。主に晨朝勤行や在家門徒の勤行に用いられる。
- 文類正信偈 (念佛正信偈)
親鸞聖人の『浄土文類聚鈔』の中にある七言百二十句の偈頌。正信偈と大意は同じだが偈文が異なる。御正忌報恩講に用いられる。
- 念佛
初重・二重・三重の3つの節により、それぞれ盤渉(B)・平調(E)・黄鐘(A)の音より始まる。
- 行譜
初重・二重は4回、三重は3回、念仏が延びやかに唱えられる。
- 草譜
初重の一部が簡略化されている以外は行譜と同じ。
- 速譜
行譜の各重ともにユリの数・節が省略されている。晨朝勤行にのみ用いられる。
- 短念佛
単音で5回念仏が唱えられる。
- 報謝念佛
3つの音程で唱えられる念仏で中間では50回以上念仏が唱えられる。佛光寺派独自のもので晨朝勤行にのみ用いられる。
- 和讃
親鸞聖人の『三帖和讃』によるもので七五調四句の和文。念佛の節で唱えられる。
- 六首引
各重二首ずつ念仏と交互に唱えられる形式。行譜・速譜念佛と合わせて用いられる。
- 三首引
各重一首ずつ念仏と交互に唱えられる形式。草譜念佛と合わせて用いられる。
- 一首引
一首のみ唱えられる形式。必ず三重の節による。主に短念佛と合わせて用いられる。
- 七首引
正式には三首格七首引と言い、三首引の初重・二重のみ三首連続して、計七首唱えられる形式。文類正信偈と合わせて用いられる。
- 早引和讃
四句目を除く各句末にのみ節を付け、五首連続して唱えられる形式。阿弥陀経と合わせて、本山で毎月22日の聖徳太子、25日の法然上人、27日の善導大師の月次法要の晨朝勤行に用いられる。
- 回向
勤行の最後に必ず用いられる。
- 願以
軽重を問わず用いられる。
- 世尊
重度の勤行に用いられる。
- 願以(略)
節が省略されており、軽度の勤行に用いられる。
- 我説彼尊
節が省略されており、軽度の勤行に用いられる。
- 略伽陀
三経の前に用いられる。
- 真回向(略)
本山で御正忌報恩講の28日満日中勤行にのみ用いられる。
- 回向句
天台系声明
- 略本譜
天台系声明を本譜と言い、同じ節の繰り返し部分などいくらか節を略したものを言う。
- 佛讃
梵語による讃文。本山で奇数年御正忌報恩講の27日大逮夜勤行に用いられる。
- 四智讃
梵語による讃文。本山で偶数年御正忌報恩講の27日大逮夜勤行に用いられる。
- 至心礼
- 佛名
本山で御正忌報恩講の25日・26日・27日の日中勤行に用いられる。
- 供養文
本山で御正忌報恩講の24日・25日・26日の逮夜勤行に用いられる。
- 勧衆讃
本山で御正忌報恩講の各逮夜勤行に用いられる。
- 着座讃
- 六句念佛(甲・乙)
本山で御正忌報恩講の28日満日中勤行に用いられる。
- 伽陀
- 回向
- 常行三昧
遠忌法要や落慶法要などの重要法要に用いられる。
- 三礼
- 四奉請
- 甲念佛
- 漢音小経
通常呉音にて唱えられる小経を漢音にて唱えるもので経中の決められた文字を読誦しない。また経中に出てくる舎利弗の「舎」の文字ごとにキンを一打する『舎利キン』という作法を伴う。
- 合殺
- 後唄
佛光寺第29代 眞照上人著
『真宗佛光寺派 五線声明集』 昭和52年発行
『佛光寺辞典』 昭和59年発行
及び
本山下附
『真宗佛光寺派 勤行集』 平成8年改訂版
を参照しました
※本山で法要に用いられる記載について、改定等で現在は行われていないものがあるかも知れません。